夢のスコアの由来となった試合を紹介します。
「夢のスコア」、略して「夢スコ」という言葉をSNSでよく見かけますよね?
5-0の試合のことを指すのですが、由来を知っている人は意外と少ないのではないかと思います。
夢のスコアとはいつ生まれた?
実は夢のスコアの誕生には韓国が関わっており、ワールドカップでの出来事です。
結論を言うとと1998年のフランスワールドカップで韓国がオランダに5-0で敗れました。その時に韓国人がネット上で3-0や4-0と比べて5-0は天と地の差があり、「夢のスコア」であると自虐的に言ったとか。そしてそれがネット経由で日本に伝わったとか。
「夢のスコア」という言葉は韓国のネット上で誕生したのか日本に伝わった際に(2chとかで)そう訳されたのか、この辺の経緯がいまいちよく分かりませんが、当時ネットをしている人はそこまで多くないですしそれが現代まで伝承されたことが凄いですよね笑。
とまあ、「夢のスコア」という言葉の由来はもはや当事者に聞かないとわからないのですが、今回はその由来となった試合を紹介します!
1998年フランスワールドカップのグループステージ第2戦!
その前に、両国のサッカーの歴史や、どういう思いでフランス大会、そしてグループステージ第2戦を迎えたのか知っておきましょう!
オランダサッカーの歴史(〜1998)
オランダは1970年代にトータルフットボールで一世を風靡し、1974、1978と2大会連続で準優勝します。しかし、その後1982、1986と2大会連続でW杯出場を逃しました。
1988年のユーロで優勝し、国際舞台に戻ったオランダはフリット、ライカールト、ファン・バステンのオランダトリオを要して1990年のイタリア大会に臨みましたが決勝トーナメントの1回戦で優勝した西ドイツに破れました。
1994年のアメリカ大会では準々決勝で優勝したブラジルに惜敗。
1998年のフランス大会はシード国として大会に臨みます。当然優勝を狙っていました。
韓国サッカーの歴史(〜1998)
韓国は1954年のW杯に初出場。1986年のメキシコW杯からは連続で出場しており、アジアの中では抜きん出た強さを誇っていました。
1994年のアメリカ大会では強豪のドイツ、スペインと同組となりましたが、初戦のスペイン戦は終了間際の同点ゴールで引き分けます。第2戦は南米のボリビア相手にスコアレスドロー。最終戦では前回優勝のドイツ相手に3点ビハインドの状態から2点を返す検討を見せました。
1勝1分1敗で決勝トーナメント進出を狙っていた韓国にとってはボリビアに勝てなかったのが想定外でした。
しかし、アメリカの猛暑も手伝ったとはいえドイツとスペインに善戦したことから世界との差は確実に無くなっており、韓国国民は4年後のフランス大会での躍進を疑いませんでした。
1998アジア最終予選でも圧倒的な強さで早々にワールドカップ出場を決めました。
フランス大会開幕後のオランダ
シード国(ポット1)として参加したオランダは優勝候補でしたが、初戦は守りを固めたベルギー相手にまさかのスコアレスドロー。
しかもその試合でFWのクライファートが相手選手への肘打ちで退場処分となり、3試合の出場停止が下されました。
韓国戦に勝たなければグループステージ敗退も有り得る状況となりました。
フランス大会開幕後の韓国
悲願の1勝と決勝トーナメント進出を狙う韓国は初戦でメキシコと対決。前半ハソクジュのFKが相手に当たって入るラッキーな先制点でしたがその直後にハソクジュが危険なタックルで一発退場となります。前半はリードして折り返すも後半崩れて3失点を喫し、メキシコに敗れます。この初戦逆転負けは2006W杯での日本にちょっと被りますね。それと同じぐらい韓国は絶望的だったと思いますが、次はさらなる強豪オランダ。敗れるとグループステージ敗退が決まってしまう状況となりました。
試合
1998年6月20日 グループステージE組第2戦。
会場はマルセイユのスタッド・ヴェロドローム。観客55,000人の7割近くはオランダサポーターでした。
両チーム先発メンバー
まずはオランダです。
GK 1 Edwin van der Sar
DF 3 Jaap Stam
DF 4 Frank de Boer (c)
DF 5 Arthur Numan
MF 6 Wim Jonk
MF 7 Ronald de Boer
FW 8 Dennis Bergkamp
MF 11 Phillip Cocu
MF 14 Marc Overmars
MF 16 Edgar Davids
MF 20 Aron Winter
Manager:Guus Hiddink
初戦から先発メンバー3人を入れ替えましたが、見ての通り凄いメンバーです。
故障していたベルカンプが今大会初の先発です。
監督は4年後韓国代表監督となるフース・ヒディンクです。
続いて韓国です。
GK 1 Kim Byung-Ji
MF 2 Choi Sung-Yong
DF 4 Choi Young-Il (c)
DF 5 Lee Min-Sung
DF 6 Yoo Sang-Chul
MF 7 Kim Do-Keun
FW 9 Kim Do-Hoon
FW 10 Choi Yong-Soo
FW 11 Seo Jung-Won
MF 15 Lee Sang-Yoon
DF 20 Hong Myung-Bo
Manager:Cha Bum-Kun
Jリーグでも活躍していた選手も多くいますね。
故障していたエースのチェヨンスが今大会初の先発です。
ちなみにこの試合の韓国は2ndユニフォームで上から青ー白ー青です。
韓国が青いユニフォームを着ているのはなかなか珍しいですよね。
この試合オランダは1stユニフォームで橙ー白ー橙ですが、橙が淡色とも判断できるので大丈夫ですがどちらもパンツが白なので、現代だと厳しい組み合わせかもしれませんね笑。オランダもこの大会の2ndは青なのでどうしようもなかったのでしょうがせめて韓国のパンツを青にするべきだったのではと思います。
話がそれましたが試合を振り返ります!
前半
試合は立ち上がりからオランダが主導権を握り、何度もゴールに迫ります。
しかし最初の決定機は韓国。8分にチェヨンスのヒールパスを絡めたダイレクトパスを2本続け、キムドフンが強烈なシュートを打ちますがサイドネット。韓国のスピードある攻撃でした。
オランダは両サイドをワイドに使った攻撃を仕掛けます。左サイドがヌマンとオーフェルマルス、右サイドはウィンターとRデブールです。
左サイドのオーフェルマルスはヨハン・クライフの背番号14番を受け継いだ選手ですが、韓国はオーフェルマルスのスピードについていけません。
16分には右アタッキングサードでベルカンプの変態キープと鬼フィジカルで韓国DFが簡単に跳ね返されます。ペナルティエリアに入ったベルカンプからパスを受けたヨンクの強烈シュートはキムビョンジがなんとか弾きます。
ベルカンプの変態キープ Dennis Bergkamp HENTAI keep the ball.
この動画はそのときのベルカンプの変態キープなのですが、笑ってしまうほど意味不明ですよね。
20分あたりからオランダの波状攻撃が続きます。
最終ラインのFデブールやスタムからベルカンプなど前線の選手に楔がどんどん入ります。
韓国のDFラインはどんどん下がってしまいますが、下がりすぎると23分のようなダビッツの強烈ミドルシュートが待っています。
パスが面白いように回り、ずっと韓国陣内でサッカーをするオランダ。韓国はギリギリのところでなんとか持ち堪えます。
当時アジアの中では圧倒的なフィジカルとスピードを誇っていた韓国でしたがオランダはさらに数段上をいっていました。
26分。韓国が久しぶりに獲得したFK。狙うにはかなりの距離ですがチェヨンスがロべカル並みの助走をとり狙う雰囲気を出します。が、遅延行為でイエローカードを提示されます笑。結局シュートは外れます。
30分頃からは韓国も盛り返し、何度かチャンスを作ります。
36分にはソジョンウォンがDFと上手く入れ替わりGKと一対一になろうかというシーンでしたがダビッツが驚異的な速さで戻り、クリアされます。
この大会ダビッツのこういうシーンは多くありました。
37分。Rデブールのパスを受けたベルカンプからコクにボールが渡る。
ベルカンプの動きも相まって一瞬シュートコースを空けてしまった韓国DF陣。
つかさずコクが振りの早いシュート!
韓国GKのキムビョンジが一歩も動けないシュートが突き刺さりオランダついに先制。
40分。韓国は右サイドPAわずか外でFKを獲得します。何としても同点にしたい韓国はDF2人を残してゴール前に入ります。しかし、簡単にクリアされ、ボールがベルカンプに渡ってしまいます。一度は韓国DFがカットしますが上がって来ていたヨンクにボールを奪われてオランダのカウンター。3対2の状況から左に開いたオーフェルマルスに渡る。切り返しで韓国DFを振り切りニアサイドにぶち込む。オランダ2点目。
韓国にとっては重すぎる失点…
そして前半終了。
前半はオランダサポーターの大合唱が響き渡り、韓国は完全アウェイの状態でした。韓国に対するオランダサポーターのブーイングも激しく、特にGKキムビョンジのゴールキックの際は早く蹴るようブーイングが常に浴びせられました。それでもキムビョンジは逆にキックフェイントをみせてオランダサポーターの火に油を注いでいたので強心臓です。
前半のシュートはオランダ10に対し韓国5でした。
後半
後半もオランダが攻めまくります。ベルカンプやダビッツのシュートをGKのキムビョンジがなんとか防ぎます。
59分。チェヨンスがワンツーから抜けてシュート打ちますがファンデルサールが飛び出してブロック!
韓国はこの試合初の枠内シュートでした。
その後オランダの鬼のようなパス回しからのシュートを浴び続ける韓国。オランダの選手は恐ろしいほどピッチ全体を見れていて且つ正確な早いパスを出すのでどうしようもできない韓国。
69分。韓国最大のチャンス。キムドフンがオランダDFの裏をかいたパスをソジョンウォンに出します。2006年ドイツワールドカップの玉田のゴールシーンに凄く似てます!GKと一対一でしたが角度が無く外してしまいます!
その直後、ウィンターのボールをペナルティアークで受けたベルカンプ!最初は韓国DFに潰されたように見えましたがすぐに反転しゴール方向を向きます!そして1秒間に3回ボールをタッチするという変態技でキムテヨンかわし、最後は右のアウトサイドでゴールに流し込みます!まさにベルカンプ!
これはとても有名なゴールなのですが何度見てもシビレます笑。
3点差となった韓国はとにかく点を取りに行こうと前線のソジョンウォンにボールを蹴り出します。
しかし、オランダのプレスも早いためフィニッシュまで行けず、逆にカウンターから決定機も作られてしまう状況となりました。
78分。オランダはベルカンプに替えて長身のファンホーイドンクを投入します。いきなりゴール前のFKを蹴らせて試合に馴染ませます。
その1分後に自陣でボールを持ったRデブールからファンホーイドンクへロングパスが渡り、左サイドに開いたオーフェルマルスへ預けます。オーフェルマルスのクロスにゴール前に入っていたファンホーイドンクがお手本のような叩きつけるヘディングでゴール。
韓国のDFは3枚いましたが、Rデブールから始まったあっという間の展開に混乱状態で誰も競ることが出来ず呆然と立ち尽くしていました。
81分に韓国は途中出場の19歳イドンゴクがミドルシュートで一瞬だけオランダを驚かします。
83分。ヨンクのパスを受けたRデブールが簡単にDFを交わしてゴール。5点目。
6点目を狙うオランダに対して韓国も得点を狙いますがオランダのパス回しで体力を消耗しきっていた韓国はもう限界でした。
勝利を確信したオランダサポーターの大合唱の中試合終了。
こうして「夢のスコア」は生まれました。
事故の5失点ではなく、なるべくしてなった5失点ですね。
フランス大会3戦目以降のオランダ
韓国に圧勝したことで得失点差で首位に立ったオランダはグループステージの最終戦で勝点で並ぶメキシコと対戦しました。前半は圧倒的な内容で2点取ったオランダでしたが後半途中からメキシコに流れがいき、アディショナルタイムにまさかの同点ゴールを許して試合終了。得失点差でなんとか首位突破でしたが納得のいくグループステージではなかったでしょう。
決勝トーナメント1回戦ではアディショナルタイムのダビッツのゴールでユーゴスラビアに辛勝。
準々決勝はアルゼンチンとの名勝負!前半にお互い1点ずつ決め、後半はお互い1人ずつ退場者を出します!最後はアディショナルタイムのベルカンプのビューティフルゴールでアルゼンチンを撃破します。
準決勝のブラジル戦でもブラジル相手にボールを支配する展開で互角に渡り合いました。PK戦の末敗れましたが、大会一の好試合でした。
3位決定戦では圧倒的に試合を支配し、クロアチアの倍以上のシュートを打ちましたが敗れてしまいました。結果4位でしたが、オランダのサッカーは世界中のサッカーファンを虜にし、今でも根強い人気を誇っています。
フランス大会3戦目以降の韓国
オランダに大敗し、決勝トーナメント進出の夢が絶たれた韓国は大会期間中にも関わらず監督のチャボングンを更迭しました。最終戦のベルギー戦では先制されますが同点として引き分けに持ち込みました。全敗は免れたものの、縮まっていたはずの世界との差がこんなにもまだ開いていたのかと認識しました。韓国国民は4年後の自国開催を不安視しました。
4年後の2002年には立場が逆転
韓国は自国開催の2002年日韓ワールドカップでヒディンク監督のもと、悲願の初勝利をあげ、ポルトガル、イタリア、スペインといった強豪国を次々と破りベスト4に進出します。
一方のオランダは4年前のメンバーが更に成長し、ワールドカップ出場は確実視されていました。しかし、ヨーロッパ予選で同組となったポルトガルとアイルランドに1勝も出来ずにグループ3位…ワールドカップに出場できませんでした。
当時は今以上にオランダサポーターが日本にいたと思われますが、オランダの予選敗退は衝撃的で相当絶望したと思います。
今でも2002年にオランダが出場していればもっと面白い大会になったと思っています。
最後に
4年前ボコボコにされた韓国が4年後ワールドカップでベスト4。
4年前ボコボコにしてベスト4だったオランダが4年後ワールドカップに出場出来なかった。
わからないものですねサッカーは・・